ダブルタップ(鎗王)

<画像はこちら>  (リック=レスリー)




レスリーの笑顔がこんなに少ない映画は初めてでした(苦笑)

この映画、『男たち〜』のシリーズと似たような感じなのかな、と

思っていたら、全然違っていて

迫力やスピード感は押さえ気味に、

心理的なものを前面に押し出して描かれていました。

人に向かって銃を撃つまでは

鶏が撃たれるシーンですら見たがらなかったリック(レスリー)が

最後、笑いながら人を殺すまでに壊れていくのは

見ていてかなり怖かったです。

またその狂気を本人が受け入れられたのなら良かったのですが、

「良心」と「人を殺める快楽」との板ばさみとなり

時々我にかえっては、葛藤し苦しむのが本当に可哀想でした。

いっそ本物の悪人になれたらどんなに良かったか‥。

でもそこが大明星、レスリーの演技力の見せ所!

「美しさ」は二の次になっていたものの、

リックの苦悩は充分伝わってきました。


私には、リックの彼女、コリーンこそが、

リックの良心を繋ぎとめている最後の鍵ではなかったか、と思いました。

コリーンを奪われ、必死に彼女を奪い返そうとするリック。

しかし悲しい事に、その経過すらも血にまみれ、

リックの『良心』は見る間に消えてゆきます。

コリーンを取り返しに行く前、

薄暗い、銃弾が散乱する部屋の中で、

リックは一人でもがき苦しみ、

自分のこめかみに銃口を押し当て、引き金を引こうとする。

しかしその苦しみの表情が不意におさまり、真顔に戻ってしまう。

その早い回復が、消えていくリックのわずかな良心の存在を表しているようで

「誰かどうにか出来ないものか」と思わされました。

でもあの時、コリーンをリックの元に返したところで、

正常に戻りはしなかったでしょうし、

結局あの結末しか有り得なかったのでしょう。

どんなに追い詰められても、

コリーンやリックは、リックを助ける(殺す)事が出来ませんでした。

結局、自らの手を汚してリックを救ってくれたのは、

リックが唯一ライバルと認めたミウ刑事、その人でした。

彼もリックがハマった『狂気』に危うく呑まれそうになりますが

そんな彼を支えたのは、医師である彼の妻、エレンの存在でした。

コリーンのリックに対する気持ちも確かに『愛』だったのですが、

ミウとエレンは、『愛』と言うよりも

もっと強い『信頼』の絆で結ばれていました。

コリーンはリックに対して献身的に尽くし、

彼を崇拝的に盲目的に愛したけれど、

ミウとエレンは、お互いを尊敬し合い、その上で愛し合っていました。

こちらの2人は、お互いが対等な立場であったわけです。


銃の魅力に取り付かれた2人の男を、愛し支えた女性達は、

それぞれがその愛する男に銃を向けられました。

ミウの妻は、

「彼を何とかしてなだめたい」「彼を止められるのは私だけだ」と、

『彼に私は撃てない』という確たる気持ちから

彼の銃の前に立ちはだかったように見えました。

しかしコリーンは

「狂っていく貴方をこれ以上見ていられない!先に私を殺して」

と言った絶望感から、暴走した彼の銃の前に身を投げ出しました。

「絶対に止める」と思って立ちはだかる女と

「もう止まらない」と思って身を投げ出す女。

双方の男性は結局は完全な正義と悪に分かれたように見えましたが

本質は同じだったはずです。

2人が惚れこんでいる『銃』は、命を持たない的を撃つ為でなく、

取り調べ室でリックが言っているとおり、

『人を殺す為に発明された物』なんですから、

『的を撃つ』から、『人を殺す』に標的が変わっていっても、

それは仕方のない事だったかもしれません。

しかしそんな2人の男性の生き方を決定的に分けたのは

彼らを愛した2人の女性の存り方でした。


リックはいつも孤独で、

彼を愛し、一番理解してくれているはずのコリーンですら

リックと共に堕ちていってくれたわけではありませんでした。


借金に苦しみ、大会で銃を振り回したミウの友人をリックは殺します。

その後、病院からの帰り、

リックはコリーンにだけ本心を打ち明けます。

「あの時、オレは幸せな気分になったんだ」

しかしそのSOSを受け取りながらも、コリーンには何も出来ません。

彼を立ち直らせる事も、殺してあげる事も、共感してあげる事も。

結局コリーンは、リックを最後まで庇い通しただけでした。


コリーンはリックと同じく、リックを責め、

そして彼を立ち直らせられない自分を責める事しか出来ませんでした。

そんなコリーンからリックは離れようとします。

彼女の安全の為に。

しかしコリーンは拒む。でも彼と一緒に地獄へは堕ちない。

リックはコリーンの存在がある限り、良心の呵責に悩まされ続ける事になります。

最後、2人の男達は、撃ちあい、どちらもが重症を負います。

そして2人共、走馬灯のように愛する女の事を思い、

1人は自分の命にケリをつけようと立ち上がる。

もう1人は助かろうと呼吸を整える。

結局はこれが男達の生死を分けたのですが、

これはどちらにとっても、ハッピーエンドだったんだろうと思いました。

リックは死ぬ以外、もうどうしようもなかった。

リックの心に巣食った狂気は、

コリーンにも、リック自身にも、どうにも手に負えるものではなかったからです。

リックが刑事と容疑者を殺し、警察に喧嘩を売ったのも、

無意識のうちにミウに助けを求めていたからかも知れません‥。

同じ匂いのする彼に。

今回、『彼女を取り戻す為』に戦うリックですが、

従来の映画に出てくる「恋人を奪還する者」とは

全然違っていてちょっとびっくりしました。

まずリックからは『熱さ』が全然感じられませんでした。

怒りも情熱も。

彼はいつも淡々としていました。

本当に彼女を取り戻したいのか?と思わせるほどに。

ずっと嫌っていたはずのジョーを殺す時ですら、

嬉しそうでなく、むしろ少し気の毒そうな顔をして話し掛けていました。

逃げている時も、追われている立場の者とは到底見えず

誘い込んではワナにハマった人たちを楽しそうに殺しました。

射撃場に音も無く立っているリック。

ミウ刑事の車のすぐそばに、突然現れるリック。

だんだんどちらが追い詰められているのか分からなくなってしまいました。

あの場合、ミウ達刑事側が追い詰められていたんですかねぇ??

しかしいくらリックにもう救いがないとしても

傷ついてはカレンの胸に抱かれ、癒されているミウ刑事と比べ

彼はあまりにも孤独でした。

それだけに彼が本当に可哀想で可哀想で。

まさに『銃だけが友達さ』って感じ(涙)

そんなんじゃ頭に銃を突きつけたくもなるっての。


ちょっとした疑問

(真面目な人は読んじゃだめです)


リックは神出鬼没でしたが、

ジョーの家はどうやって知ったんでしょうか?

後をつけたのか?

でもどうやって家の中に入ったのよ?

あと、苗の携帯の番号もどこで知ったんだろう?

特に調べてるようなシーンはなかったけど。

『警察』は香港でも『警察』って書くんですね。

ちょっと嬉しかったり(苦笑)

最初、ジョーが新人に銃の撃ち方を教えているシーン。

「スタート」という意味の言葉を言ってるようですが

北京語の方、どう聞いても

それじゃ始めよ」に聞こえて仕方ないんですが(笑)

それからリックのイメージトレーニングに付き合うコリーン。

タイムを計る時、「開始」と言ってるような‥。

日本語と北京語は発音が近いのかな?

それとも私の耳が悪い?<この可能性大(笑)

ヴィンセントさん、『恋戦。沖縄』にも出てましたね。

あの時は銃の名人の役だったのに、

今回はヘタレ役(笑)

イメージトレーニング中の

「ばちゅん、ばちゅん(銃声らしい)」が可愛い。

リック先生はおっかないっス。

どうやら彼はクドクドと頭ごなしに怒るタイプのようで。

あげくに「(うまく撃てないのは)キミの目標が低いだけなんだな」って(涙)

射撃場で、リックは追ってきた警官達を次々と撃ち殺していきます。

その時、なぜか女性だけ無傷。

あれはわざと?

それとも彼女が隠れた車のタイヤのゴムが、銃弾を弾き返したのか?

VCDのパッケージにある『鎗王』、

『王』のトコにちゃんと銃弾が『ダブルタップ』になってます。

何気にちょっと可愛いです♪


最後に


今回、私が一番共感出来たのは、リックの彼女、コリーンでした。

狂ってしまったリックに銃を向け、

引き金を引こうとする‥でも引けない。

そのうち涙が溢れてきて、嗚咽がもれる。

それを手でふさぎ、必死で撃とうとする。

でも殺せない‥。

見てて思わず泣きそうでした。

リック‥そんな酷な役を、彼女にさせるなよ。

この作品に出てきたのは、『熱い絆を持った男達』というより、

『女性に依存し、守られ、支えられていたとても脆い男達』でした。


いつもこの手の映画を見た後には

「あー面白かったな」って思うのに、この映画は悲しいやら切ないやら。

今回はレスリーが悪者だった為に、

きっとそっちに強く共感しちゃったんでしょう。

でも方中信さんにもちょい惚れちゃいました。可愛くて(苦笑)




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